市中肺炎(CAP)に対する治療において、抗菌薬投与期間の短縮により有害事象や薬剤耐性リスクが抑制される可能性がある。一方、入院患者における3~4日間の短期治療を支持する実臨床データは限られている。そこで、米国・テキサス大学サウスウェスタン医療センターのGeorge Doumat氏らの研究グループは、CAPで入院し、抗菌薬投与3日目までに臨床的安定が得られた患者を対象として、3~4日間の抗菌薬治療と5日間以上の抗菌薬治療をtarget trial emulationの手法を用いて比較した。その結果、短期抗菌薬治療の適格基準を満たした患者は全体の10.1%にとどまっていた。また、この集団では3~4日間と5日間以上の治療で30日死亡や再入院などの評価項目に明確な差はみられなかった。本研究結果は、Annals of Internal Medicine誌オンライン版2026年4月14日号に掲載された。
研究グループは、米国ミシガン州の67施設のデータを用い、2017年2月23日~2024年7月31日にCAPで入院した成人患者5万5,517例を対象として、観察研究を実施した。対象患者のうち、入院1~2日目に抗菌薬治療を受けて抗菌薬投与3日目までに解熱し、臨床的に安定した短期抗菌薬治療の適格患者について解析した。解析対象患者を抗菌薬投与3日目以降に0~1日追加された短期治療群(総治療期間3~4日)、2日以上追加された長期治療群(総治療期間5日以上)に分類した。両群の比較には、target trial emulationの手法を用いた。主要評価項目は30日死亡とした。その他の評価項目として、30日以内の再入院、救急外来・緊急受診、Clostridioides difficile感染症を評価した。
主な結果は以下のとおり。
・CAPで入院した5万5,517例のうち、短期抗菌薬治療の適格基準を満たしたのは5,620例(10.1%)であった。
・適格患者5,620例の年齢中央値は68.2歳、男性の割合は54.3%であった。Charlson併存疾患指数の中央値は2、CURB-65スコアの中央値は2であり、中等度の重症度を有する集団であった。
・適格患者における抗菌薬総投与期間の中央値は7日であり、3~4日間の短期治療を受けた患者は444例(7.9%[3日間4.4%、4日間3.5%])にとどまった。
・エンピリック治療として多く使用された抗菌薬は、セフトリアキソン(89.3%)、アジスロマイシン(76.9%)であった。退院時に抗菌薬が処方された患者は80.8%で、退院時処方薬として多かったのは、経口セファロスポリン系薬(39.4%)、アジスロマイシン(34.2%)、アモキシシリン・クラブラン酸(19.9%)などであった。
・30日死亡は短期治療群で3例(0.7%)、長期治療群で37例(0.7%)に発生した。短期治療群の長期治療群に対する30日死亡の調整リスク比(aRR)は0.89(95%信頼区間[CI]:0.01~2.25)であった。
・30日以内の再入院は短期治療群40例(8.8%)、長期治療群417例(8.1%)に認められた(aRR:1.07、95%CI:0.81~1.42)。
・緊急受診は短期治療群37例(8.1%)、長期治療群458例(8.8%)であった(aRR:0.94、95%CI:0.70~1.28)。
・Clostridioides difficile感染症は、短期治療群1例(0.2%)、長期治療群11例(0.2%)に認められた(aRR:1.01、95%CI:0.18~5.68)。
・抗菌薬に関連する有害事象は全体で131例(2.3%)に発現し、各群の発現割合は短期治療群3.3%、長期治療群2.2%であった。
本研究結果について、著者らは「CAPで入院した患者のうち、短期治療の適格基準を満たしたのは10.1%にとどまった。この集団では、死亡率は短期治療群、長期治療群のいずれにおいても低く、その他のアウトカムについても、短期治療と長期治療の間に差は認められなかった」とまとめた。
(ケアネット 佐藤 亮)